秋の こもごも


“豊穣の秋ですよvv”




雑貨屋さんでの店頭でのアルバイト。
今年はブッダと二人一緒にという変則Ver.でお願いされたのだが、
そのココロは?といえば、

 「そっか、今年の連休が五日もあるからだ。」

今年のハッスル商店街のバザー&フリマフェアは、
例年と同じく九月最終の土日が開催日なのだが、
その1週間前の週末から、
秋の連休、シルバーウィークとやらが始まるようで。
洗面台を兼ねた流しで顔を洗ったそのまま、
何気なく見やった壁掛けのカレンダーに やたら赤い数字が並んでいるの、
今までは気に留めてなかったらしいイエス様。
二度見をしてからじぃい〜〜っと見据えてののち、
おおうと玻璃色の双眸見開き、
そのままの姿勢で“ブッダブッダちょっとちょっと”と興奮気味に呼び招くのが
判りやすいったらありゃしない。
苦笑を何とか押し隠して“なぁに”と呼ばれた釈迦牟尼様だったが、

 知ってた?
 うん、まあその…

バカンス中の自分たちには祭日や曜日なんてあまり関係のない話だし、
ましてや、ご当地の祝日なんて、
日本人でなけりゃあ謂れや起源が判らないものも多数とあって、
自分のお誕生日さえ把握していなかったイエスには、
尚のこと なかなか覚えてなんておれないことだろう。
だがだが、

 「私はほら、スーパーのチラシとかよく見るし。」
 「あ、そっか。」

節約が信条という主夫の鑑のブッダ様。
特売日を見落としでもしたらば、
膝から頽れ落ちての地に手をついて“一生の不覚”と愕然とし、
いつまでも落ち込み続けてしまうに違いなく。
そっか、それじゃあ覚えてもいようよと、
イエスにもそこはあっさりと納得がいった…というのも
それはそれで問題があるようなないような。(笑)
そして、そこから冒頭の 今年は二人で招聘された云々となるのだが、

 「バザーの前の週が連休ともなると、
  皆さんお忙しさも倍加するんじゃないのかなぁ。」

一般家庭の方々は、やれ行楽だお彼岸の里帰りだと運ぶのだろうが、
お商売をしているお家ではそうもいかぬと、
お付き合いが深まるうち、イエスにも何とはなく見えたり聞こえたりするものはあったよで。
和菓子屋さんではおはぎや赤飯の注文が増えるそうだし、
洋菓子のお店でも、手土産用の焼き菓子の詰め合わせを増やすとか。
お惣菜のお店は行楽帰りのお母さんが寄るのを見越すのみならず、
お出掛け前に立ち寄ってもらおうと特別にお弁当も用意するそうだし、
販売の方の忙しさもさることながら、バザーの準備も詰めに入るとあって、
とてもじゃあないが自分たちのお休みはあってなきが如しとなるらしく。

 「それで、頼もしきブッダへも参戦お願いできないかと、
  そんなお声掛けになったんだよ。」

 「おや。」

彼らが手掛けているのはあくまでも
店頭での夏もの一層クリアランスセールだが、
お彼岸とか敬老の日が直接関係ないからか
雑貨屋さんのご一家はバザーのほうでの進捗連絡を担当しておいでなので、

 「段取りへの舵取りに関わる役職だもの、
  やっぱりお忙しいに違いないから。」

 「そっか。」

本業をないがしろにするではないが、
任せることが出来る人がいることであるのならと、
接客とは微妙に異なるが、社交や対人術(?)にほころびがなく、
お買い物にまつわる計算も素早いブッダを援軍に要請するなんて、

 「雑貨屋さん、実は名のある軍師なのかも。」
 「イエス、何かシュミレーションゲームとかにはまっているのかい?」

あまりに深読みが過ぎるのへは、
らしくないからというよりも そっちを想定し、
こらこらと宥めに回るところが
イエスの日頃に馴れているブッダだと言えて。
さすが、2000年紀もお付き合いがあると把握も違うというところか。(おいおい)
それはともかく、
二人のアルバイトはその連休の最終日までとなっており、
特にノルマなどがあるではないが、
それでもラストスパートにかかっているというところかと。

 「連休といったって、
  高校生の皆さんは結構学校まで出てくるのでしょう?」
 「うん。学園祭とか体育祭とかの準備があるらしいからね。」

体育祭では設営の打ち合わせとか、応援の部の演出の刷り合わせ、
某女学園では毎年恒例という華麗なマスゲームの練習とかがあるらしいし。
文化系の部に入ってる子たちも、
先の話だとはいえ文化祭の発表や展示の総仕上げや打ち合わせがあるそうだし、

 「観に来てねって、招待券貰ったでしょ?」
 「そうだったね♪」

あくまでも自主的なそれという登校をする子らが、
お昼ご飯の買い出しに出てくるらしいからと、

 「そこを見込まれての私たちって布陣だと?」
 「うん。」

雑貨屋さん、おそるべし…な見解はもういいとして。(苦笑)

 「じゃあってのもなんだけど、
  私たちの連休はそれじゃあ日替わりスィーツで楽しむってのはどうだい?」

恐るべしと洞察する、こちらも軍師を気取ったお顔で決めておいでのイエスなのへ。
ほらほら普段へ戻ってと誘う呼び水のつもりか、
ブッダが六畳間の卓袱台へ戻りつつ、そんなお声を掛けてきて。

 「日替わりスィーツ?」

いかにも美味しそうなフレーズ、しかも大好きな如来様のお声にてとあって、
イエス将軍のお顔もあっという間に無邪気な食いしん坊のそれへと直り、
何それなになにと、滑り込むように卓袱台の向かい側へ素早く着席しちゃった現金さよ。
そんな変わり身へくすくすと可笑しそうに笑いつつ、

 「ほら、秋と言ったらいろいろな果物や野菜が旬だから。」

テレビを見ていてもスマホで何かしらググっても、
そういった季節柄レシピのバナーが目に付くそうで。

 「果物だけでも、
  ブドウに梨に、イチジク、早生のりんごに栗に柿でしょう?」

そのままは勿論、ケーキやコンポートにしてもいいし、と。
甘いものが大好きなイエスへ、美味しい話を差し向ければ、

 「わあvv」

そこは素直なヨシュア様、
わくわくと嬉しそうにお顔をほころばせ、

 「ブッダの作るコンポートは甘さと食感が絶妙だものねぇvv」

お砂糖と白ワインとでとろりと煮詰める砂糖煮は、
ジャムともコンフィチュールとも違って
素材の風味も残していなければという手際が結構難しいはずなのにね。
尊き釈尊、浄土世界の知啓の真珠たる如来様が、
ミルクパンやら小ぶりなフライパンをひょひょいと扱い、
それは見事に仕上げた逸品を、
“洋ナシのコンポート、秋風のヴェールとともに”なんて、
薄焼のクレープと一緒に出してくれたりするのだから、

 “もしも浄土の皆様に知れたなら、
  私、相当に恨まれそうだなぁ…。”

だって、私からして この幸いは誰にも譲りたくないしと。
そうそうスィートポテトも素朴で美味しいし、
モンブランもおしゃれな作りでなくていいなら作れなくはないよなんて、
イエスを喜ばせるあれやこれや、
あまた並べて下さる尊い美人さんをうっとりと眺めてしまっておれば。

 「…いえす?」

聞いてる?と、あまりの反応の薄さにか、
おややと案じるような顔になってしまったブッダだったので。

 「あ、や、あのその、
  えっと…サツマイモの炊き込みご飯とか。//////」

なんて。
ちょみっと外れたお返事をしてしまい、

 「?」

朝ごはん食べたばかりなのに?と思ったか、
深瑠璃色の双眸をキョトンと見張ってしまった釈迦牟尼様で。

 スィーツよりも美味しそうなキミだなぁなんて見惚れてましたと、
 麗しくも愛しい君からの凝視に負けて、
 ついつい白状してしまうまで、あと1分…。





   〜Fine〜  15.09.18.


 *そうそう、関西には“もみじの天ぷら”というお菓子がありまして。
  箕面の勝尾寺という山寺の近辺で有名なお土産として作られている
  かりんとうみたいな揚げ菓子です。
  もみじを使うとはいえ、
  専用のもみじを塩漬けし、通年で販売できるようにしておいでで、
  でも最聖のお二人がこれを聞いたらば、
  飢饉のときの苦衷を忘れずにと作った食べ物?とか
  畏れ多いことを想像されそうですね。


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